弊社が推奨する商品開発プロセスは「まずデザイン(※)ありき、機能はそのデザインを実現するための手段」です。なぜ、そういった「機能はデザインに従う」=「デザインが機能を規定する」(Function Follows Design)やり方で上手くいくのか?
※デザイン:見た目だけでなく価値を提供する手段としてのデザイン。
Form follows function - that has been misunderstood. Form and function should be one, joined in a spiritual union.
Frank Lloyd Wright
※"Form follows function"(形態は機能に従う)という有名な文句についてFrank Lloyd Wright氏は「(誤解されているが)形態と機能は不可分だ」と述べた。
それは、建築を考えていただければ、簡単に理解できます。家を建てるときには、まず建築士による設計図(デザイン)があります。それに従って必要なパーツが組み上げられていきます。
先に機能から作るというのは、この順序を無視するということです。設計図なしに、大工さんだけで家を建てるということ。いちおう「住む」という機能は満たせるでしょう。高い「耐震性能」「断熱性能」を実現できるかもしれない。
しかし、施主の満足度は・・・?
そういうカタログスペック的な「機能」には価値がありません。お金を出して手に入れたいのは、例えば、「おばあちゃんがつまずかない」「炊事がラク」「お客様の導線と生活の導線が別」などの感性的な価値だったりします。これはカタログ的でも定量的でもない価値です。これは建築家による全体設計図なしに、現場の作業だけで実現可能でしょうか?立て始める前に全体を考え抜いたプランが必要ではないでしょうか?
ですから建築において建築家の役割は重要ですよね。「住んでみたら住み心地が悪かった」ということを避けるために。
同じやり方は、ほかの分野の製品(例えばソフトウェアなど)でも上手くいくのでは?
冒頭の問い「なぜ弊社の主張するやり方のほうが、うまくいくのか?」に対しては、これが回答です。
良い議論をしたいので遠慮無くコメントください。
2006年2月15日にタイトルを変更しました。旧タイトルは「相互作用のデザインが不可欠な理由」です。

DATE: 2008/03/08 08:03:01
初めまして建築事務所に勤めるasanoともうします。
ちょっと気になる点がありましたのでコメント致しました。
本文中に先に機能から作る事は設計図を無視する事だとありますが、この文章に疑問を感じました。
私は設計図を無視すると言う事は逆に機能を無視すると言う事だと思います。
設計図とは必要な機能(項目)や求められている機能(項目)等を抽出し整理したものであり、もちろん「おばあちゃんがつまずかない」や「炊事が楽」といった感性的な価値も機能のうちに含まれると思います。また機能とは目的やニーズを達成するための手段や支援であると考えています。
ZEROBASE様のお考えになっている機能とは具体的にはどのようなものなのでしょうか?
追伸
機能とは目的を達成する為の手段や支援でありそれを元に全体の設計を行うのが良いと言った意味でルイス・サリヴァンは「形態は機能に従う」と言いったのだと思います。
またフランク・ロイド・ライトは、モダニズムにおいて機能主義が暴走し、効率のよい機能は自動的に美しい形を生み出すといった、勘違いの風潮に対して、機能的且つ美的なデザインをしなければならないと考え「(誤解されているが)形態と機能は不可分だ」と述べたのだと思います。
二人は師弟関係ですしね。
DATE: 2008/03/08 12:13:25
おっしゃることは、よくわかります。
アップルCEOスティーブ・ジョブズ氏のデザイン哲学 @ ZEROBASE BLOG (2007年09月30日)
http://zerobase.jp/blog/entry-430.html
"私は「デザイン」が「見栄え」のことだけではないことを伝えるために、よく「機能とデザイン」という言い方をします。しかし、とても気持ち悪い。本質的に不可分なのだから「デザイン」とだけ言いたい。"
"デザインとは「どう見えるか(how it looks)」ではなく、「どう機能するか(how it works)」の問題である" --- スティーブ・ジョブズ
私の関心はソフトウェアにあります。
機能の観点では「印刷機能」でもユーザにとっては「紙という形態で入手できること」が価値です。
機能の観点では「ソート機能」でもユーザにとっては「名簿を見やすくするために名前順にならべること」が目的です。
要するに「機能」を論ずるレイヤーが一段低い。建築やプロダクトに比べて、ソフトウェアのデザインは、まだまだ未熟だということです。
そういうことを書きました。
DATE: 2008/03/11 14:48:48
石橋さま
お返事ありがとうございます。
つまりソフトウェアの場合、求められている物事(提供する価値)に対して機能を規定すると言う事で、その求められている物事(提供する価値)からデザインするということでZEROBASEさんは「機能はデザインに従う」と仰ったと解釈して宜しいでしょうか?
そういえば情報系の学会で、工学系では機能からのアプローチを、デザイン系ではニーズからのアプローチをする傾向があります。そう考えれば合致が付きました。
建築でも居心地の良いリビングとはどのような形か?集中出来るオフィスはどのようなレイアウトかと日々悶々と考えさせられます。建築やプロダクトでは、こういう形にするとこういう機能になると、形がそのまま機能(機能がそのまま形)になるため、こういう価値を提供したいからこの機能をつけるというフェーズまで考えが行きどきませんでした。失礼致しました。
建築でも情報デザインが重要であり、例えをあげるならアフォーダンス、マッピング等を日々考えさせられます。大変良い勉強をさせて頂きましたありがとうございます。
DATE: 2008/03/11 15:07:37
asano様、追加のコメントありがとうございます。
いやはや、お恥ずかしい限りで、私のほうも勉強になりました。
ありがとうございました。
DATE: 2008/03/11 15:17:48
追伸
デザインを無視して機能からつくるといった話の例は建築よりも、ケータイの話が良いかもしれません。
例えばいくら高機能・高性能な機種を開発しても、ユーザーはそれよりもサービス面を求めています。そればかりかコミュニケーションをとるための道具が一人歩きして目の前の人とのコミュニケーションが失われ、さらには暇つぶしのゲームや音楽の為にコミュニケーションすらなくなってしまっているケースもあります。
これこそ価値や経験のデザインを無視し、機能むしろ性能ばかり開発している例だと思います。
DATE: 2008/03/12 22:36:58
asano様
>コミュニケーションをとるための道具が一人歩きして目の前の人とのコミュニケーションが失われ、さらには暇つぶしのゲームや音楽の為にコミュニケーションすらなくなってしまっているケースもあります。
なんと、これは慧眼ですね。なんたる。恐れ入ります。
しかし、携帯電話ともなれば、その利用者数を考えると「社会性」がつきまといますね。デザインの社会性、社会的責任。
我々の作っているものなど、まだそれだけの利用者を得るところまでいっておりませんので、とやかく言える立場ではございませんが。自らがそれくらいのヒット・プロダクトを生み出したときには、その社会的影響に対する責任も負わなければならないな、と思いました。
>価値や経験のデザインを無視し、機能むしろ性能ばかり開発している例
そうですね。これには「本来の」とつけたいです。
携帯電話の開発をリードするのは(日本の場合、メーカーではなく)携帯電話会社だと思いますが、彼らはユーザの価値や経験のデザインをずっとしてきたつもりでしょうね。ただ、それが、時代に振り回される格好で(競合との競争を意識しすぎて)、増築、増築を繰り返したいびつな形になっている。「携帯電話」の総体としては、本来の価値や経験から離れてしまった。
「話せりゃええやん、電話やし」
といったツーカーの広告コピーが遠い昔のようです。
半年毎に新機種を出す異常なペース。一つのプロダクト(端末)を、腰を据えて作ることができるわけもありません。
そういうルールを作ってしまった日本の携帯電話業界は、みずから「イノベーションのジレンマ」に陥ってしまった気がします。