この文章の概要:Yahoo!360°の本質は【SNS】ではなく【SN】にある。「SNSとしてイケてない」という批判は的外れ。大化けのシナリオ。少しGrouptubeも。長いです。
※要約を用意しました。お急ぎの方はどうぞ。→ 【3分で読める】SNS論(SNとSNSの違い)とYahoo! 360°の狙い
以下を読み進んでくださる方へ:先にこちらを読んで頂くと、より話が通じやすいかもしれないですね。
※ソーシャルネット論(SNSとSNの違い)
Yahoo!360°の意図はSN
ヤフーが先日発表したYahoo!360°についての論。

ヤフー幹部の発言を読む
「ソーシャルネット論(SNSとSNの違い)」に書いた内容をふまえて、下記INTERNET Watchの記事を読んで頂けると、ヤフーの構想が見えてくる気がしますが、いかがでしょうか(これらの発言が本音だとして)。とくにヤフー株式会社代表取締役社長兼CEO井上雅博氏の発言に注目。
井上氏は「SNSが日記公開サービスかといえば、それは重要な点ではないだろう」との考えを示した。
これは「mixiは日記コミュニティサイトである」という文脈での返答でしょう。
「Yahoo! JAPANに必要なものはソーシャルネットワークという“SN”の部分」と続けた井上氏は、「Yahoo!ショッピングのレビューを読む時に、知らない人よりも知っている人のレビューのほうが信頼性は高いだろう」と例示。
これは、まさに「SNS」と「SN」の違いをはっきりと意識した発言。Yahoo!360°はSNSではない、と宣言。現時点ではSNSに見えているけれども、本質的には「Yahoo!JAPANというサイトのSN機能」ということ。
300万会員を突破したmixiが独走態勢にあるSNS市場において「ヤフーが出遅れた面があるのは否めないが、日記を書き続けられる人は人口の一割程度ではないか」と井上氏。一方でマーケティング部長の大蘿(たいら)淳司氏は、「むしろ日記ではないところに魅力があるのではないか」と考えているという。
これも前述の「mixiというホールプロダクトは、友人との日記コミュニケーションという価値を提供する」という理解に基づいて、「mixiみたいな日記コミュニティにするつもりはない」と解釈できる。また、拡大解釈すれば、「mixiから日記を切り離しても面白い部分があるとしたら取り込んでいきたい」と言っているようにも読める。(深読み)それは「商品レビュー」などかもしれないですね。なんにせよヤフーの膨大な既存サービス群や、今後追加されるサービス群、それらを統合・連携させる力を考えれば、Yahoo!360°というSN機能をそこにかませるのはとても面白い展開だと思います。
「一般にブログとSNSでは書かれる内容が違う。そうした情報コントロールに新たな価値があるのでは」。
これも前述の「ブログ+RSSリーダ」「日記+SN」(=mixi)という対比と、しかし「ブログが日記を置き換えたわけではない」ということをふまえての発言と解釈できる。「日記+SN」というプロダクトに対して、ではブログの本質的価値とは何か?
mixiニュースを踏まえ「mixiもポータル化しようという動きなのではないか。ポータルからSNSに入るか、SNSがポータル化するかという経緯が違うだけで、最終形は同じものになるのかもしれない(大蘿氏)。
後述のYahoo!ショッピングやYahoo!ミュージックでの360°連携イメージを読んで頂ければ、「ポータルからSNSに入る」と「SNSがポータル化する」の違いは明確になります。ポイントは「最終形」という言葉。
Yahoo!360°の「最終形」
先ほど「ヤフーの構想が見えてくる」と書きました。記事の発言も読んだことですし、まとめに入ります。つまるところ、その構想とは、(抽象的に表現すれば)Yahoo! JAPANが提供する各種サービスのあらゆる場面において、知り合い・友達の顔が見えるようになる。より具体的に表現すれば、あらゆる場所からYahoo!360°にリンクしたり、逆にYahoo!360°の一部(プロフィール情報など?)を各種サービスの側に読み込んだり、という形で統合・連携するということ。あくまで空想ですがイメージを提示してみます。
- Yahoo!ショッピングで、ある商品を見ているときに
- お友達の○○さんがこの商品をおすすめしています →「いつも会社に持って行ってるやつ。値段は高いけど壊れにくいよ」※あなたが○○さんの同僚だとしたら?
- Yahoo!ミュージックで、あるCDの情報を見ているときに
- お友達の○○さんもこのCDを買っています →○○さんの一言「結婚式で流したなぁ」※あなたが○○さんの結婚式に参加していたとしたら?
「ポータルのSN統合」vs「SNSのポータル化」
こんなかんじ?でYahoo! JAPAN上のあちこちに友達が出現してくる可能性がある。こういうイメージを持っているからこそ「ポータルからSNSに入る」(大蘿氏)という表現が出てくるのではないか。(深読み)
また、現状のmixiで、こういったことはできない。いまのmixiでは、商品レビューは商品レビューカテゴリ内にリスト化されているだけ。上記のようなことをやりたかったら、mixi内に商品カタログ(やショッピング)などのコーナーを自前で作る(あるいは提携という場合もありえるが)必要がある。これが「ポータルからSNS」「SNSのポータル化」という「出発点と方向の違い」の本質。
Yahoo! 360°と既存SNSの「最終形」競争?
マーケティング部長大蘿淳司氏は「最終形は同じものになるのかもしれない」という発言だ。ただ、こうした「最終形」に近いのはどちらか? 私はヤフーのほうだと考える。
こう考えてみればいい。ミクシィが自前でショッピングサイトを作るのにどれくらいのリソース・時間が必要か?あるいは外部のショッピングサイトと提携するのは?その際はプライバシーの問題も大きいだろう。ヤフーのYahoo! JAPANという同一サイト内なら問題・障害は少ないためスピーディに実現できるだろう。(※ショッピングだけでなくヤフーが提供するサービスは70個?くらいあるわけで)
うがった見方をすれば「最終形は同じものになるかもしれない」という発言は、先行SNSの危機感をあおらず、裏では一気に抜き去る準備をしていて、それを悟られないために控えめに言っているのか?(深読み)
どう考えてもヤフーのほうが(「SN統合ポータルという最終形」を先に実現した上で会員獲得や利益における競争をするにおいては)圧倒的に有利な位置にいるような気がする。(ミクシィがポータル化してヤフーに追いつくことができるかどうかという話)
もちろん規模の競争をするつもりがミクシィにないかもしれない。というか、多分、ない。だから「競争」「有利」という話は意味がないかもしれない。とはいえミクシィにとっては「ヤフーとの競争は考えなくていいけどヤフーの影響で危機に瀕しない」ことは考えていると思う。なんていうか、高速道路で大型トラックと競争するつもりがなくても、そいつに抜かれるとすごい臭い排ガスを吸わされるから、なんとしても抜かれないように頑張る(→結果として「競争」になる)。で、トラックのほうは競争するつもりはなくて、単に目的地に急いでいるから速いだけ、という。そんなイメージだ。
Yahoo!360°はSNSではない
これらの考察で分かるように、Yahoo!360°自体はSNSの体裁であるものの、あくまで「Yahoo! JAPAN(www.yahoo.co.jp)というサイトのSN機能」という位置づけのほうが本当の狙いではないか。いずれYahoo! JAPAN内の、ほぼ全てのサービスにおいて組み込まれる/呼び出される機能、という位置づけでしょう。(もちろん、やりすぎない範囲で適切にやってくれるでしょう)
こういった、サービスの垂直統合、緊密な連携。これこそ最強ポータルであるヤフーの強みです。新たに加わるSN機能はミクシィキラーにもなりえる。
ミクシィ vs Yahoo!360°
ネット上の先進的な人たちの多くは「360°ダメじゃんミクシィのほうがいいよ」なんて言ってるが・・・
SNSとしての比較では、Yahoo!360°のポテンシャルを見誤りますよ! 大化けするかもしんないって。
※ヤフーさんは「みんな分かってねえなぁ(笑」って感じかもしれない。いや、そもそも隠そうとはしてない。記者懇談会の記事でバラしてるんだから。これは「mixi眼中になし」という余裕の表れか。裏ですごいカードを隠し持っているのかもしれない。(深読み)
Yahoo! JAPANのSN統合が推進されていくと、「なんだミクシィよりできること多いじゃん」ということになってくる。ユーザから見れば「ホールプロダクト同士としてのYahoo! JAPAN(360°ではなく)対mixiの比較」になる(そこで併用・共存というのはもちろんありえる)。またヤフーの強みとして、まだmixiがリーチしていないユーザを大量に取り込む力もある。
一方でSNSおよび日記のスティッキネスは強い。私などもそうだが年単位で日記を書き溜めていると、もはや他のSNSに乗り換える気にはならない。Yahoo!360°がmixiユーザのスイッチングを狙うと、けっこうな体力を消耗するだろう。
しかし「SNS」として「乗り換え」させるから、そういう話になるのであって、「Yahoo! JAPANのSN機能ですよ(mixiとは競合しないし併用してね)」というマーケティングならば併用ユーザを増やすことは十分に可能だろう。
ヤフーとしては競争は意識しないわけではないだろうけれども、最初からミクシィ対抗戦略に力を入れる必要も無いのでは? むしろ初期は無駄な努力に終わる可能性が高い。よって、時間をかけて徐々に併用ユーザを増やせばよい。というのは、mixiユーザはSNSに対する期待値が高いため、現状の完成度では「ダメじゃん使えねーじゃん」というネガティブ印象で終わってしまう。よって一部の業界人を除き、現時点ではむしろmixiユーザに知られないほうがいい、といってもいいだろう。(十分に完成度が高くなってから一気に認知、スイッチさせる狙いで。なぜなら一度悪いイメージがつくと払拭するために倍の努力を要するからだ。倍ってのは比喩ですが)
そうして、ある程度の時間を経て、サービスの完成度向上とともにユーザ数増加してくると、これはミクシィにとっての脅威になりえる。ユーザが徐々に軸足をmixiからYahoo!360°に移すということは十分に考えられる。「併用からスイッチ」というのは過去のブログASP乱発時期にも見られた現象であり、記憶にある読者の方も多いだろう。
ちなみに私自身が最初はGREEメインで使っていて、mixi登場時は「なんだこれ」と思っていたものの、なんとなく日記を書き始めたら、ひと月も経たないうちにGREEを見なくなった。だからSNSにおける「併用からスイッチ」というのは十分にありえると思います。(とくに利用頻度が高いからこそ、余計に、「どれかに絞りたい」となってくるのではないかと)
というわけでヤフーにとってmixiは脅威ではないかもしれないが、ミクシィにとってYahoo!360°は脅威なのではないかと考える。ヤフーにとってはミクシィが成長・生存・衰退いずれであろうが(長期的には)あまり関心ないのではないだろうか。このへん前述の「トラック・排ガス・追い越し車線」の例え話でも説明しました。(※しかしmixiのアクセス量を考えるとネット広告市場での競合という要素はあるのかな?まだ広告市場という観点では詳しく考察してないです。だれか専門的な記事を書いたらトラバください)
と、この程度のレベルの話はとっくの昔に終わっていてお互いに高度な戦略を練りつつある段階であろうから(深読み)、今後の両者がどのような競争戦略でいくか、あるいは競争しないブルーオーシャンを作り出していくか、さらには意外なダークホースが競争相手として登場してくるのか、などなど、面白くて目を離せない市場だ。いいぞーやれやれー(当事者は大変だが、外野は気楽だ)
さて、ここまでの文章をまとめます。
- Yahoo! 360°自体はSNSである。
- Yahoo! 360°とmixiをSNS(あるいはmixiの本質である「日記コミュニティ」)として比較すれば、たしかにmixiが良くできている。
- しかし比較すべきはそこ(だけ)ではないのでは?
- Yahoo! 360°はSN機能としてYahoo! JAPANに統合されるだろう。
- よって本体の「ポータル」という比較軸もあるだろう。
- mixiポータル化は、どこまでやってもYahoo! JAPANに追いつかない(だろう)。
- ならばミクシィの戦略は? ポータルにはならない?
面白いので今後も引き続き生暖かくヲチしたいと思います。
追伸:ペパボのGrouptubeについて
小規模・クローズドSNSの有料ASPであるGrouptube by paperboy&co.を使い始めました。これはコンシューマ向けSNS事業ではなく(SNS ASP事業)、ポータル化とも関係ないため、上述の競争とは無縁。保有SNSシステム「キヌガサ」を転用して開発費を浮かせている面はあるかと思いますが、キヌガサも含む累積ベースでは黒字化まで持っていくの大変じゃないかなと想像します。でもpaperboyはマーケティングが上手いと思うので、そのうち儲かる事業になっていたりするかもしれない。
ちなみに「マーケティングが上手い」の部分はネタフルさんが書いてます。おそらくpaperboyさんは、このマーケティング手法に自信があるんでしょうね。一つの道具を使い続けて極めていく、というのは経営において有力な戦略だと思います。(BCG戦略コンセプトによれば経験曲線(エクスペリアンス・カーブ)という概念で説明できるでしょう)
それにしてもpaperboy&co.が上手だなと思うのは、早速A8.netでアフィリエイトを開始しているのです。手際がいいです。成果報酬もけっこう高額なんですよね(アフィリエイトしたい人はA8.netに無料登録しましょう)。基本的なネタとしても面白いけれど、こうしてアフィリエイトを使って草の根的にぶわっと広めていくという作戦。もはやpaperboy&co.のお家芸ですね。
追記(3月24日) ネタフルさんが(購入するとアフィリエイトになるSNS「ビルコレ」)コメントされてました。「Yahoo! がSNSを導入して目指しているのもこの方向なのかもしれません」という読みは同じですね。


DATE: 2006/03/14 13:25:31
一つだけ気になったことを。
Y!JのメシダネはあくまでもPVであって、彼らがどんなサービスを展開するにしても、最終的にPVにつながるものでなければならない、という点。
ECとかやってますが、物販はけっこうコストがかさむので利益率が悪い。つまり、Y!JにしてみればECサイトさえ「商品情報と購入ルートを示すコンテンツ」の一部なんです。よくも悪くも、彼らが期待しているのはサービスから直接得られる収益ではなく、そういったサービスの総合としてY!Jが稼げるPVによってもたらされる利益なわけです。
そういう側面からみるとわかりますが、彼らにしてみれば「Yahoo!360°」はジャストSNなのです。単体のサービスから直接的に得られる利益ではなく、SNが稼ぎ出すPVこそが真の狙いであって 、それをY!J全体として収益に結びつける、という発想です。
DATE: 2006/03/14 15:39:02
コメントありがとうございます。本論にも書いたとおり「広告市場」という観点からのYahoo!対mixiについては、まだ深く考察していない点です。示唆頂ければ幸いです。(1)なお念のため確認ですが、ヤフー社が自社で(利益率の低い)EC事業(=物販・小売流通事業)をやっているわけではありませんよね。Yahoo!ショッピングは出店料、売上ロイヤルティ、その他販促オプションなど、基本的にはすべて(ヤフー社からみると)手数料収入だと認識しています。つまり「ECショップASP+広告」の収益モデル。(2)「Y!JのメシダネはあくまでもPVであって、彼らがどんなサービスを展開するにしても、最終的にPVにつながるものでなければならない、という点。」実際にそのような強いこだわり(セントラルドグマ?)があるのでしょうか?例に出された Y!ショッピングや、Y!オークションなど、広告ではなく手数料収入モデルです。どちらかというと「PVへのこだわり」ではなく「ブリック&モルタルはやらない」「利益率の高い【クリック】【デジタル】【ビット】の部分だけやります」という感じなのかなと思います。おそらくそういうニュアンスで書かれているのかなとは思いましたが、文字面だけ見ると違う意味にも取れるので、念のため書かせて頂きました。
DATE: 2006/03/15 12:25:59
言葉足らずな部分を補完していただいて恐縮です。
Y!Jのセントラルドクマ(笑)の件ですが、単に現状そうなっているというだけのことです。Y!Jの収益のほとんどは広告収入なので、その部分を極大化させるためにすべてを利用すると思っているのでそう書きました。
インターネットの広告市場はまだまだ開拓の余地がありますし、実際、儲かります。ファイナンスとかやり始めるとわかりませんが、今後もY!Jは広告市場を軸にして動くと思います。単にそれだけのことです。