(創業直後の)ネットベンチャーの経営者には「我が社には天才エンジニアがいる」と語る人がとても多いのが昔から気になっていました。ほとんどそうです。ということは、天才も「一社に一人」という時代になったのでしょうか。一家に一台、自動車じゃあるまいし。
この疑問に答え(仮説)が見つかりました。
■1.能力を判断する能力の不足
そのネットベンチャーの社長がエンジニアではない場合。エンジニアではない経営者に、エンジニアの技術力を評価する能力があるのか、ということです。
社長は社内のAさんとBさんの比較はできるでしょう(それすら怪しい場合もありますが)。しかし、それと世間の水準には何の関係もない。Bさんより優秀なAさんが、世間の平均より下かもしれない。ですから、投資家の観点で見たときには、社長が「我が社の天才エンジニア」と呼んでいるAさんは、たんに「我が社でいちばん優秀なエンジニア」に過ぎない場合があります。
なお、それ以上に重要なのは「自社の事業に必要な技術力」です。これを経営者自身が把握しているか。定義できているか。
・自社の技術力は顧客を満足させるに十分か?→顧客の需要に技術力のあり方が沿っていない
・自社の技術力は競合を打ち負かすに十分か?→競合との性能競争(持続的イノベーション)に勝てない
場合によっては、必要以上に優秀なエンジニアを揃えてしまうケースもあるでしょう。高給取りを必要以上に抱えるのは、ある種の贅沢です。社長室や社用車をつくらない社長さんでも、このことには気付かないかもしれない。
ですから、逆に投資家の観点で「我が社には天才エンジニアがいます」という社長を見るときには、
・その社長自身はエンジニアか?→評価能力の有無
・ホントに天才か?→勘違いではないか
・ホントの天才だとして、ホントにこの事業に天才が必要か?→贅沢ではないか
という3点をチェックしたほうがよいでしょう。
問題の根本を解決する方法として、エンジニアではない社長がネットベンチャーを創業するなら、ビジネスセンスのある技術者をCTOとして招くという方法があるでしょう。そのCTOに「自社に必要な技術力」を定義してもらうのです。
技術が分かってない社長さんは、ネットはすべてハイテクだと思ってますが、いまどき本当の技術力が必要なWebサイトなんて少ないですよ。ですから、「自社に必要な技術力」を過大評価しがちであることを自覚する方がよいでしょう。
■2.自己評価のバイアス
自分の能力を高めに評価してしまう心理バイアスにも要注意。
脳は自分を「できるヤツ」だと思い込む──そんなデータがある。かつて米カリフォルニア工科大学の下條信輔先生が、日本に紹介した米国での調査結果だ。データによると、高校生の70%が「自分の指導力は同級生たちに比べて平均以上にある」と考えているという。一方、平均以下と自己評価した人は、わずか2%であったそうだ。
これらの数値は「平均値」の概念を考えれば矛盾する。それだけヒトは自分を高く評価する傾向があるわけだ。
自分が雇ったエンジニアの能力が低いとは信じたくない。
人は見たいものしか見ないのです。このことを肝に銘じるべき。
■3.人を悪く言うより良く言う
社長がそとで「うちのCTOはダメで」なんて言ってる会社はどうかと思いますよね。
というわけで、案外この要素が支配的かもしれません。
といった3つの要因により、ネットベンチャーの社長は「我が社には天才エンジニアがいる」と言う傾向があるのではないか、という仮説です。
そもそも現象として「我が社には天才エンジニアがいる」という傾向が多いのか、少ないのか(何に対して)という定義をしてませんから、科学的な議論ではありません。いわゆる(自主規制)学の論文として読んでいただければ。
※関連情報
- 起業家予備軍の相談受けます(スーツ不足のお知らせ) (ZEROBASE BLOG)
- ネットベンチャーが自前主義で内製の理由 (ZEROBASE BLOG)
- 「ベンチャー起業ごっこ」応募受付開始 (ZEROBASE BLOG)
■続編