「ウェブタブレットという〈チープなオモチャ〉が破壊する家庭用PC市場」では「安くて使いやすい〈チープなオモチャ〉」が新市場型破壊のイノベーションになると考えました。では、その〈チープなオモチャ〉は、どうやったら作れるのでしょうか。一緒に考えてみましょう。
前提知識
「価値は製品に属さない」「ウェブタブレットという〈チープなオモチャ〉が破壊する家庭用PC市場」を未読であれば、本稿の前にご一読ください。
イノベーションのジレンマ
製品にとって、「既存消費者」と「無消費者」の要求は異なります。既存消費者が重視する機能を、無消費者が欲しないことがあります。
しばしば製品企画者は「あらゆるニーズに応える単一の製品」を企画します。それは「既存製品への機能追加によって、無消費者を取り込もう」という企みと一緒になって、製品の高機能化を招きます。
そうして高機能化した製品は、しばしば高価で使いにくいものになりがちです。それに対し、破壊的イノベーションは、しばしばシンプルで使いやすい製品によって成し遂げられます。「持続的イノベーションによる性能向上が、他社による〈破壊〉への隙を作る」という〈イノベーションのジレンマ〉が起こります。
〈チープなオモチャ〉の作り方
新市場型破壊を実現するほど「安くて使いやすい〈チープなオモチャ〉」は、どうすれば作れるのでしょうか。既存市場の声を聴かず、無消費者にとっての価値に集中することです。〈イノベーションのジレンマ〉の対極です。
「無消費者にとっての価値に集中する」とは、無消費者にとって不要な機能を大胆に削り、無消費者に集中したシンプルな設計にすることです。それによって「低価格」と「使いやすさ」を両立させます。機能を削ることによって、開発投資と製品原価を下げると同時に、シンプルで使いやすい製品にします。つまり「安くて使いやすい〈チープなオモチャ〉」です。
〔注:製品の要素を「大胆に削る」ことを推奨する〈ブルー・オーシャン戦略〉との共通点があります〕
無消費者という不定形な対象
〈チープなオモチャ〉を作るためには「既存市場の声を聞かず、無消費者にとっての価値に集中すること」だと考えました。ここには未解決の問題があります。「無消費者」とは誰でしょうか。どのような状況に置かれているのでしょうか。無消費者を具体的に考えないままでは、機能の要不要を検討できません。
無消費者は同質の人々の群れではありません。単に「既存消費者以外の人々」という意味に過ぎません。無消費者にも様々な人がいるので、「無消費者」と十把一絡げにできない。無消費者は不定形で、取り扱いようがない。
デザイン思考による無消費者の特定
デザイン思考は「無消費者」を特定し、見えるようにします。「特定」とは、「無消費者の中でも、特にどのような人々に集中すれば、より大きな事業機会になるのか」を探索した成果です。「見えるように」とは、「製品についての意見を聞く対象」として、実在の人物であるかのように消費者像を具体化することです。〔注:人間中心設計という製品開発方法、とくにペルソナ/シナリオ法などの適用〕
「無消費者」は、もはや不定形の存在ではなく、具体的に想像できる〈私〉になります。そうなると、
- 〈私〉が製品を受け入れる状況
- 〈私〉と製品の関係
- 〈私〉が製品に与える意味
- 〈私〉にとっての製品の価値
などについて考えることができます。「無消費者」が具体的な「人間」として見えれば、人間中心設計の方法で「無消費者にとっての価値に集中すること」ができます。もちろん「既存市場の声を聞かず」に。
まとめ
デザイン思考によって「無消費者」を具体化し、人間中心設計によってシンプルな製品を設計することが、新市場型破壊を可能にする〈チープなオモチャ〉の作り方です。私なりにこう考え、日々実践しています。一緒に考えてくださって、いかがでしたか?


