最終更新日
3月20日

MBA、MFAの次は「経済学修士」の時代だ

 

posted by
石橋秀仁

デザインと経済学の意外な近縁 | ZEROFACES」に「ECONO斬り!! 」のyyasudaさんからコメントを頂きました。ありがとうございます。

私のコメント:

それにしても、ネット企業が研究所で経済学者を雇うとは。日本のネット企業は一昨年あたり「ラボ」ブームで、猫も杓子もラボラボ言ってましたが、雇うのはエンジニアだけでした。イノベーションに賭けているYahoo!やGoogleは違いますね。日本のネット企業が雇うPh.Dは、せいぜいコンピュータ・サイエンスであり(それすら稀)、数学や経済学という例は聞いたことがありません。

さて、大前研一氏が訳した『ハイ・コンセプト』で、ダニエル・ピンク氏は、企業が求める人材がMBA(経営管理学修士)からMFA(美術学修士号)へシフトしているのではないかと問いました。好ましい変化です。ロジカルなMBAには理解できない感性の領域がある。クリエイターはそれを司る。じつはクリエイティブにも論理と経験があるが、無関心な人にはクリエイターが感性だけの人間に見えてしまう。

ある広告人の告白(あるいは愚痴かもね): 「制作のやつは馬鹿だから」みたいなことがあるのかもね。

制作は表現の専門家ではあるけれど、基本的には「馬鹿」だから、俺たちが導かないといけない、みたいなムーブメントが定期的に出て来て、はっきり言えばちょっとうんざりです。そういうムーブメントを起こす人は、たいがい見たところでは、その心の奥で表現に対してルサンチマンを抱えていたりはするんですが

ということです。とはいえ、だんだん理解が進みつつある。気の利いたビジネスマンなら誰でも「デザイン」が経営マターになりつつあることくらい当たり前のように語るようになりました。Appleの影響も大きいでしょう。

そうなると、飽きっぽい私の関心は、デザインから離れる(笑

もちろん、デザインを捨てるわけではありません。デザインの価値はますます高まる。それを道具として使い続けます。いちど身につけたスキルは、関心の対象になりません。

そこで、私がいま目をつけているのが、「経済学」です。現状を分析するだけの学問だと思っていたら、じつは未来を作ることができる学問だった。それに気付かせてくれたのは『ヤバい経済学』『その数学が戦略を変える』『数学で犯罪を解決する』といった本でした。

経済学(とくに応用ミクロ)が「使うための学問」と認識され、経済学修士を即戦力として採用する企業が増える、といった「目に見える変化」まで5年もかからないと思います。

私はcross-pollinatorとしての才能には自信があります(妄想かもしれませんが)。cross-pollinatorとは、デザイン・ファームIDEOのトム・ケリー氏が"The Ten Faces of Innovation"(邦題『イノベーションの達人』)で紹介した、異なる領域の間をつなぐ才能です。

その私がいま注目しているのが応用ミクロ経済学というわけです。この「経済学の学位保有者が産業界で活躍するようになる」という読みは外れるかもしれませんが、私にとってはそれはどうでもいいことです。私が知っているのは「私にとっては経済学が役立つことは間違いない」ということです。これまでマーケターとデザイナとエンジニアのコラボレーションでやってきました。ここに経済学者(マーケット・デザイナー)を加えることで、さらなるchemistry(化学反応)を起こします。


※余談:経済学徒が産業界で活躍するようになれば、大前研一氏が『「知の衰退」からいかに脱出するか?』の中で憂えてみせた1億総「経済音痴」の現状が改善するかもしれません。市井の経済学者が人々と対話する中で、経済学の正しい知識が広まる。バカな投票行動が減る。これは経済学を産業界が活用することの副産物になるかもしれない。経済学者のdeacademization(脱アカデミズム)が必要です。

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