デザインと経済学の意外な近縁
09-02-28
posted by
石橋秀仁
デザイナという領域には再定義の余地がある。
グラフィック・デザインやプロダクト・デザインなどは、目に見えやすい。インタラクション・デザインやコミュニケーション・デザインなどは、目に見えない。もっと目に見えないデザインは何か、と考えたら、その究極はマーケット・デザインだろう。人がインセンティブにどう反応するかを知り、逆に人の行動をインセンティブの設計によって誘導(デザイン)する。応用ミクロ経済学、数学の世界だ。21世紀のデザイナは数学ができないといけなくなる。(追記:とは言い過ぎか。経済学者もチームに加えてディレクションする能力が必要になる、といった程度にしておく)
実際、Flasherは絵を動かすプログラムを書いている。10年前は考えられなかったことだ。グラフィックの人が、映像の人になり、インタラクションの人になり、数学まで駆使して力学シミュレーションを書いたりする時代なんだ。すでにWebの世界で、デザイナは数学を使っている。デザインに経済学が取り込まれるのに10年かからないだろう。
すでにある「デザイン」のなかで、いちばん経済学に近いのは都市設計か。中村勇吾氏がWeb以前にやっていた仕事だそうだ。彼はブラウザの中でのインタラクティブ(interactive)な動きの楽しさだけでなく、サーバを介した人々の相互作用的(interactive)な動きを見るのが楽しい、都市全体の設計に興味があって、個別にどんなビルが建てられるかには興味がない、といった主旨のことをインタビューで語っていたと記憶している。
経済学とデザインは意外に近い。
ECONO斬り!! : 命を救う経済学 - livedoor Blog(ブログ)
伝統的な経済学では、市場の「見えざる手」によって、需要と供給は最適化されるといわれている。これに対して、ゲーム理論と実験経済学の研究から導かれた「マーケット・デザイン」という知見が注目されている。腎臓移植、医師の採用、無線周波数帯オークション、通学校の指定など、そもそも市場が存在しない、あるいは市場が正常に機能しないために、需要と供給の双方に不利益が生じていた。つまり「市場の失敗」があった。このような非効率な市場を機能させ、需給のベスト・マッチングを図るには、「市場参加者の増加」「情報開示の安全性」「混雑の解消」の三つを同時実現させるマーケット・デザインが要求される。
※余談:Yahoo!オークションの設計に経済学者は関与しているのだろうか? プロの経済学者が「俺ならもっとよくデザインできるのに」と残念がっているかもしれない。
この学科名は面白い→青山学院大学 経済学部 現代経済デザイン学科概要








当ブログをご紹介頂きありがとうございます。
Yahoo!については、少なくとも米国では、経済学者が検索エンジンの広告オークションについてはデザインに積極的に関与しています。つまり検索ワードに応じて広告主にいくら課金するか、というビジネスに最先端のオークション理論が用いられているわけです。Michael Schwarzという元ハーバード大助教授(現:Yahoo!Research研究員)がキーパーソンですので彼のウェブページを載せておきます。
http://research.yahoo.com/bouncer_user/61
私自身完全に確かなわけではありませんが、2007年にAmerican Economic Reviewに掲載された論文で紹介されているタイプのオークションが実際にYahoo!(おそらくgoogleでも)で用いられているはずです。
オンラインオークションに関しては、eBayとamazonのオークションを比較した以下の論文が非常に有名です。Last minute biddingが発生した場合の自動延長措置の有無が買い手の行動をいかに変化させるかを分析しています。自動延長が無い場合(eBay)の方がある場合(amazon)と比べて個々の買い手の期待利潤が増えるため、より多くの買い手を引き付けることを理論、およびデータから明らかにしています。
http://www.atypon-link.com/AEAP/doi/abs/10.1257/00028280260344632
以上、ご参考まで。
28 Feb 2009 | by: yyasuda
情報ありがとうございます。
トリビアを一つ。米Yahoo!はOvertureを買収してオークション型の検索連動広告Yahoo! Search Marketingを始めました。Overtureの前進がGoto.comで、その創業者ビル・グロスはGoogleに売り込みに行って、断られています。そのあとでGoogleもオークション型検索連動広告Google AdWordsを始めたため、Overtureに多額の和解金を支払うことになりました。つまり、Yahoo!(Overture)とGoogleのオークション・システムは、元々似たようなものだったはずです。(現状ではお互いの研究により差が生まれているかもしれませんが)
Yahoo! Search Marketing - Wikipedia, the free encyclopedia
私が本文の余談に書いた「オークション」はヤフオク(Yahoo!オークション)を念頭に置いていました。私はヤフオクの仕組みが良いとは思えません。経済学的にきちんとした説明はできないのですが、ユーザビリティ(使いやすさ)に難ありだと思っています。私は面倒くさくて使っていません。
なお、米Yahoo!のYahoo! Auctionsは閉鎖されてしまいましたね。eBayの一人勝ちです。ネットワーク外部性の効果でしょうか。
Goodbye Yahoo Auctions (May 8th, 2007)
それにしても、ネット企業が研究所で経済学者を雇うとは。日本のネット企業は一昨年あたり「ラボ」ブームで、猫も杓子もラボラボ言ってましたが、雇うのはエンジニアだけでした。イノベーションに賭けているYahoo!やGoogleは違いますね。日本のネット企業が雇うPh.Dは、せいぜいコンピュータ・サイエンスであり(それすら稀)、数学や経済学という例は聞いたことがありません。
うちは小さな会社ですが、経済学を武器にしたいと思っています。ぜひご協力を(笑
かかりつけの「経済医」が欲しい | ZEROFACES
※そういえば、怪しげなオークションサイトがありました:オークションサイトSwoopo.comは画期的ビジネス?あるいは詐欺? (ZEROBASE BLOG)
28 Feb 2009 | by: 石橋秀仁