最終更新日
4月22日

書評:「エア化する世界」木野 政 (著)

 

posted by
kotaro


「エア化する世界 There's something in the air」

■スティーブジョブズは言った。“There's something in the air.” それはエアにある。もちろんこれはMacBookAirへのジョブズ一流のキャッチコピーだったわけだけども、しかし他方、この言葉は現在われわれが知らず知らずのうちに受け入れつつある世界認識を、正確に言い当てた言葉でもあったのではなかろうか。事実、このジョブズのキーノートをリアルタイムで聞いていた人々の少なからぬ人数はその瞬間twitterで「エアMacBookAir」などと口にし、まだ見てもいないMacBookAirを、すでに触っている気分になっていたはずだ。まさしく、それはエアにあったのだ。

■木野政氏の新書「エア化する世界 There's something in the air」は、既に始まりつつある「エア化」する世界について、歴史的なパースペクティブを与えてくれる本だった。多くの日本人はこの「エア化」について、ギターの弾けない人間がギターの曲をバックにまるでギターを手にしているようにパフォーマンスする「エア・ギター」がその端緒だと認識しているだろうが、木野氏によれば、テクノロジーによりメディア体験が身体的なインターフェイスと乖離しはじめた80年代以降、すでに多くの分野で「エア化」の傾向が見られ、さらにはそれ以前から珠算のトッププレーヤーなど身体能力を超えた手続き処理の分野でも「エア化」は進んでいたと考えられるという。つまり「エア化」とは、物理的事象や身体的体験を経ずして、それをやったりした気になるという「あちら側」の論理である。

もちろん既にわれわれは、多くの分野において知らず知らずのうちに多くの体験を「エア化」して観念的なそれに置き換えている。Twitter検索でエアを検索すればその傾向の進行はあきらかであるし、そもそも「エア化」の最先端にいる人々はすでにTwitterをしておらず、「エアTwitter」で済ませていると考えられるから、これも氷山の一角に過ぎないと考えるのが妥当だろう。このまま近い将来われわれは食事をエアで済まし、睡眠をエアで済ますようになる。仕事をエアで片付けるライフハック本はベストセラーになるし、その本もエア読みすれば事足りる。全ての人間がエア人生についてエア覚醒したとき、エア人類がエア補完され、すべてがエアになる。

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